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日本料理とのノンアルコールドリンクの可能性

2016.03.24

今回、ティーペアリングの研究会として、「日本茶アンバサダー協会」の満木さん、日本茶専門店「茶倉」の小方さん、茶通の常連さんだった金子さん、「薬膳茶ラボ」の田島の4名で日本料理「和郷」さんへ伺わせていただきました。

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“日常茶飯事”という言葉がありますが、みなさんにとって、料理と飲み物の組み合わせってどのような印象をお持ちでしょうか?
たぶん料理にはビール、ワイン、日本酒などのアルコールと合わせることはよくあるけど、お茶は考えたことがないという声が多いのではないでしょうか。
私自身は、食いしん坊でお茶が好きなので、レストランでのノンアルコールドリンクペアリングをもっと普及していきたいと願っています。
食とのティーペアリングをする目的のひとつに、食の豊かさを広げられるということがあげられます。
まだまだ多くのレストランが、お酒が飲めないお客様に対して、飲める方と同様のノンアルコールドリンクを提供していないのが現状なのと、今までに提案してこなかったという状況ですが、お茶はお酒と同等にペアリングできるし、あらゆるバリエーションと可能性を持っていると思うのです。

では、これから今回楽しんだペアリングについて話しをすすめてまいります。お茶の選定と淹れ手は、小方さんと田島が担当しました。

お茶淹れのスタイルは、料理に対して小方さんと田島の2人の即興茶葉セレクトで、まるで音楽のジャムセッションのようなかけ合い型ペアリングを試みました。

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まず、スパークリングオリエンタルビューティーで乾杯!
よくお酒を飲む方は、最初にシャンパンで乾杯しますが、これが飲めない人にとっては透明な炭酸水では同じテンションで楽しめないとの思いから開発しました。

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私はお茶を淹れる時に「聞香杯」という香りを聞くためだけの茶器と飲むためだけの茶器をセットで使います。これが嗅覚をさらに刺激して、より深い茶酔いの世界に誘う魅惑のツールとなります。今回、日本茶も聞香杯で淹れていただきました。

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[料理: 突き出し2種]
① 縞海老昆布〆  赤貝  うるい  土佐酢ジュレ  花穂
縞海老の昆布〆のねっとり感、甘み。赤貝は生の状態で磯の香りがお口に広がります。うるいは鰹出汁ベースに針生姜を加えた生姜浸し、しゃきしゃき感を楽しんでいただき、追いかつおをして、旨味を増した出汁の土佐酢を柔らかめのジュレに。花穂は紫蘇の香りを ぱらぱらと。

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②子持ちやり烏賊  生海苔  たらの芽  茗荷竹  木の芽
子持ちやり烏賊は煮物として柔らかく炊いておき、包丁し粉を打ち表面だけフライパンで焼きます。焼いた事による香ばしさと火を入れすぎないやわらかさをお楽しみいただき、生海苔を佃煮に卵黄とあわせソースに。海苔の香り、卵黄のコクが引き出され、烏賊と卵の相性の良さが引き立ちます。たらの芽と茗荷竹は天ぷらにしうす塩をあてました。それを木の芽の香りとともに。

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・日本茶: 足久保
静岡県足久保産の普通煎茶。品種おくみどり。山間のお茶で香りが良く滋味深い。鼻にぬける爽やかな香りが土佐酢のジュレに合うかと思いました。でも最初のお茶なのでもっとうまみの強い出汁のようなお茶にすれば良かったと思いました。

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・中国茶: 雲南の烏龍茶ブレンド
コクと旨味が強いタイプと華やかな香りがあるタイプの2種類の烏龍茶をあわせることで、お茶と料理とのお互いの旨味成分が甘味やコクを強め、磯の風味をより引き立ててくれるようにイメージしました。

[吸物:引き立て一番出汁  車えび帆立真丈  梅人参  青味  柚子]
ゆるーい会ですので、熱い吸物は淹れ手も熱いうちに食べたい。だから、お茶選定をやめて食べることに専念。

【お造り: 熟成カンパチ  ヅケ  金目鯛  彩り野菜  香味油】
2週間熟成のカンパチの腹身で、旨味の凝縮・熟成のネットリ感の大トロの脂。ヅケ(カンパチ)は香り高い海苔と辛子のアクセント。金目鯛は脂ののったもの。彩り野菜は、人参、長いも、うるい、スナップえんどう、ハス芋、大根などなど。香味油は食感と香りを引き立ててくれます。

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・日本茶:みなみさやか
宮崎五ヶ瀬産の有機栽培の微発酵茶。品種みなみさやか。緑茶に近いのであまみも残り爽やかな花香がします。カンパチのヅケの濃厚さと香味油の後味をみなみさやかの花香がまとめていたと思います。

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・中国茶: 雲南緑茶と雲南烏龍茶ブレンド
魚自体の素材感が活かされた刺身に対して、お茶は華やかなアロマと旨味・コクが豊かなお茶をブレンドしました。薬味がお茶と魚の風味をより引き立て、熱いお茶を飲むと薬味の香りが鼻をかけめぐり、魚の油や臭いが締まりました。

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[魚料理: 鰆低温焼 ちぢみほうれん草 柚子大根]
・鰆の皮目のパリッと感香ばしさ、身はジューシーに。ちぢみほうれん草はバター鰹だしでソテーし、素材の持つ甘さを引き出しました。大根は包丁し塩をあてるだけで、柚子皮をいれ、食感と香りを立つように調理。

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・日本茶:森町
静岡森町産の中蒸し煎茶。 無肥料無農薬の有機栽培茶。火香(中国茶でいうと焙煎のような仕上げの香り)が強く香りが残ります。熱湯でいれました。鯖の皮目の香ばしさと柚子大根に合うとおもいました。火香と多少の渋みが後味をスッキリさせていたような

・中国茶:台湾烏龍とゆずブレンド
香り高く、優しい甘味の台湾茶高山茶は、野菜の素材の風味を引き立てて、生の柚子の刻んだものを加えて、柑橘の香りと高山茶との香りのハーモニーをお楽しみいただきます。

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[肉料理:尾崎牛ザブトン  焼野菜  九条葱  鬼卸し]
尾崎牛の熟成ザブトン 低温焼からの炭火焼 赤身の旨味 炭の香り。蓮根、椎茸、行者にんにくを尾崎牛の脂でソテー。肉との相性のよい九条葱はソースとして、葱の香りと旨味との融合を味わっていただきます。大根の鬼卸しポン酢を添えて、食感とお口直しに。

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・日本茶:花香ほうじ茶
宮崎五ヶ瀬産。品種かなやみどり。自然な花の香りがするくきほうじ茶。ほうじかたが浅めなため焙煎のような香りが残ります。炭火焼きのお肉のうまみをつつんで後味の余韻が良かったと思いました。

・中国茶: 雲南の紅茶と雪菊
ふくよかな甘味と旨味のある雲南紅茶とすっきりとした雪菊をブレンドして、紅茶が赤身の肉を甘味と旨味と雪菊がネギなどの薬味の辛味との余韻を複雑にしてくれるようなイメージで淹れました。

[料理: 新玉ねぎごはん からすみ  味噌汁  香の物]
新玉ねぎを一番出汁と共に炊き込みご飯に。新玉ねぎの甘み、とろとろ感を味わっていただきます。自家製のカラスミを摩り下ろし、カラスミの旨味と香り、さらに香り高い青海苔をのせました。味噌汁はなめこ、九条葱。香の物もつけました。

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・日本茶: 徳島つるぎ町
徳島県つるぎ町の煎茶。山間のお茶で自然な香りが楽しめる煎茶。懐かしい香りがします。こちらはからすみに合わせました。からすみの塩気とあいさっぱりしました。また香の物の豆腐の味噌漬けにも合っていたのでミモレットやパルメザンなどのチーズも合わせてみたいと思いました。

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・中国茶ː焙煎台湾烏龍茶
食事に対しては、オーソドックスな焙煎烏龍茶。焙煎茶は、穀物を炒った風味がしてお米との相性がよく、和みます。

以上、ティーペアリングの内容をご紹介させていただきまししたが、食とノンアルコールドリンクの可能性はまだまだ始まったばかりで、今後、もっと進化させて行きたい分野です。
考えてみれば、”日常茶飯事”としてのお茶は私たち日本にとって、かけがえのない文化遺産でもあります。
古来より中国からお茶が日本にもたらされて、遥か1,000年以上になりますが、様式や流儀は変化してもお茶を”愛でる”気持ちは時空を超えて感じます。
一滴のお茶がもたらす真の”豊かさ”を今の私たちはどのように感じて、どのように伝えてゆくべきか?
そこには果てしないお茶によるご縁「茶縁」の広がりや感動があると想います。
私自身は、お茶の作り手、お茶をいただく消費者の間に立って、お茶をお伝えするお仕事をさせていただいております。
今後、みなさまとも何か茶縁がございましたら、ご一緒にお茶を飲みながら夢を語り合えたら幸いです。

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◆日本料理「和郷」さん
水出し茶を通常メニューに出していらっしゃいます
・住所:東京都大田区西糀谷4-13-10 FLAT HILL No3
・最寄り駅:京急空港線 糀谷駅
・TEL:03-6423-2216
・営業時間:17:00 ~ 23:00
・定休日:火曜日、祝日
・H.P:http://wakyo-koujiya.com/

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この記事を書いた執筆者

薬膳師:田島 庸喜

薬膳師:田島 庸喜(たじまのぶよし)

東洋哲学から板前へと転じ、さらには北京中医薬大学日本校を卒業後、漢方医の資格である国際中医師、国際薬膳師を取得。中国茶の奥深さ幅広さに魂を完全に奪われ、中国茶文化を勉強中。また台湾茶専門店「茶通」を経営した中華三昧な日本人。<br />
現在は、日本茶の普及にも携わり、さらにレストラン、薬膳など、独自の日中台合作によって無限のティーペアリングに挑む。

■薬膳茶教室などをご案内「薬膳茶ラボ」
http://yakuzenchalabo.tumblr.com