ENJOY!日本茶

ホーム
コラム
> 岐阜のお茶旅 vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗

岐阜のお茶旅 vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗

2017.12.15

01

 

岐阜県郡上市八幡町(ぐじょうし はちまん町)は「郡上八幡」(ぐじょうはちまん)として多くの人々に愛される町です。岐阜県のほぼ中央に位置します。400年以上の歴史を持つ「郡上おどり」(盆踊り)が夏の風物詩として有名です。城下町として発展してきた古い町並み。美しい吉田川が流れ、町の中には幾つもの水路があります。流れる水音は心地よく町の中に響き渡ります。

今回は郡上八幡の人々が愛する美味しい「ほうじ茶」を求めて、「田中茶舗」をお訪ねしました。

 

02

 

郡上市八幡町島谷にある「田中茶舗」の田中 史月(ふみこ)さんです。
生まれも育ちも郡上八幡の史月さんは、35年前に田中茶舗に嫁ぎました。10年間ほどは育児と家事に追われる日々。家業のお茶屋を手伝いながら、少しづつ、仕事を覚えていきました。

 

03

 

 

田中茶舗は63年前、お舅さんの勇(いさむ)さんが創業しました。現在は田中茶舗の代表を務めています。田中茶舗では、春に新茶を仕入れ、火入れをして販売しています。茶葉の買い付け、ブレンドや焙煎などの作業は力仕事です。高齢になった勇さんを手伝いながら、仕事を覚えていった史月さんです。

現在の「お茶屋さん」は様々な産地、静岡産、宇治産、九州産など、バラエティーに富んだお茶が揃っているお店が多いのですが、田中茶舗は抹茶以外、岐阜県産の美濃茶のみを販売しています。
郡上八幡には「小那比(おなび)」と言うお茶の産地があります。田中茶舗では小那比茶を中心にお茶を販売しています。地元のお茶。地産地消のお茶です。

 

04

 

郡上市八幡町小那比の茶畑です。郡上市から峠を越えてたどり着く山の中の農村です。清らかな風が吹き渡る美しい茶畑です。標高が高いので茶摘みの時期はゴールデンウィークが過ぎてからになります。小那比の茶摘みは「一番茶」のみで、希少価値の高いお茶です。この小那比茶のファンが郡上八幡には多いのです。
「小那比のお茶は美味しい!」お客さんはよく知っています。郡上八幡、自慢のお茶です。

 

05

 

接客をする史月さんです。お客様に、「小那比のお茶、入ってますからね。」
すると、お客様はとても安心して、笑顔になります。「それなら美味しいわ。」
田中茶舗では、ほとんどのお客様がほうじ茶を買いに来ます。もちろん小那比の煎茶も販売していますが、ほうじ茶の種類が多く、まるで、ほうじ茶専門店のようです。

 

06

 

人気商品の1kg入りのほうじ茶です。業務用ではありません。一般家庭でこのサイズを購入する郡上八幡の人々のお茶好きが見事に伝わります。田中茶舗では主に3種類のほうじ茶を販売しています。

 

07

 

 

左から「特上ほうじ茶」「親子ほうじ茶」右端のほうじ茶はお値打ちで、地元のスーパーマーケットでも販売しています。どのほうじ茶も、田中茶舗の史月さんが春にお茶を仕入れ、ブレンド、焙煎を自ら手掛けたほうじ茶です。代表の勇さんの仕事を引き継ぎ、郡上八幡のほうじ茶文化を守り続けています。
「特上ほうじ茶」は、小那比の新茶のみをほうじ茶用に仕上げてもらい、それを、史月さんが焙煎します。贅沢な新茶のほうじ茶です。

 

08

 

09

 

 

「特上ほうじ茶」の茶葉の写真です。新芽、ゴールデンチップが確認できます。そして、茶葉の形が煎茶の針のような形ではなく、曲がっていて、独特な撚りがかかっています。昔はどの家庭にもお茶の木があって、春になるとお茶を造る。昔はもちろん手作業で、むしろの上でお茶を揉んで作っていました。むしろの凹凸が茶葉にあたり、自然に撚りができます。懐かしい郷土のお茶を未来に繋げていきたい。そんな思いが、「特上ほうじ茶」には秘められています。

 

10

 

茶葉自体も甘く芳醇な香りがします。熱めのお湯を注ぐと、香ばしい香りが立ち、輝きのあるクリアーな黄金色。少しとろみがあり、新茶の特徴を感じます。濃厚な煎茶を思わせる味わいの中に、香ばしさも感じ、後味はすっきりとした余韻です。

人気の「親子ほうじ茶」は茎のうま味が感じられ、マイルドで優しい味わいです。香ばしい余韻に癒されます。
お手軽なタイプのほうじ茶はカジュアルな味わいで、飲み疲れることなく何杯でも飲めてしまいそうです。小さなお子さんにお勧めです。
どのタイプのお茶も、ブレンドや焙煎の風味が違うほうじ茶です。それを手掛ける史月さん。特に焙煎には神経を使います。その日の気温、天気、茶葉の様子。どれ一つとっても、同じ状況ではありません。焙煎機の火を止める前の10分間ほどは、何度も茶葉を手に取って、様子を確認します。目で、耳で、香りで、感触で、茶葉と向き合う真剣勝負です。
週に2~3回は焙煎の作業をする史子さん。毎回、心に思い願うことは「美味しいお茶を造りたい」私たちには見えない史月さんの挑戦は続きます。「お客さまが美味しい!と喜んで下さることが一番嬉しく、励みになる。」モチベーションの高まりはお客様の笑顔にあります。
史月さんが茶葉を焙煎すると、香ばしい香りが町の中を漂います。郡上八幡、自慢の銘茶の香りです。この町は観光客が多いので、旅館や飲食店が多くあります。
田中茶舗のほうじ茶を使う旅館やお店が多く、そのお茶の美味しさに魅せられたお客様が来店することもあり、取り寄せるお得意様も多くいます。そして、この町のお菓子屋さんやカフェでは、田中茶舗のほうじ茶が使われています。

 

11

 

郡上八幡にあるお菓子屋さん「中庄」は田中茶舗のほうじ茶を使い、和風の焼き菓子「ほうじ茶葉入り そばぶっせ 郡上っ子」を販売しています。生地にほうじ茶の茶葉がたっぷり入っています。甘いバタークリームがサンドされた美味しいブッセです。茶葉の風味が生き生きと感じます。

 

12

 

郡上八幡の古民家カフェ「お抹茶処 宗祇庵(そうぎあん)」では、「郡上おどり」を描いたパフェが人気です。このパフェの一番下にある、琥珀色のゼリーは、田中茶舗のほうじ茶で作られています。濃厚なクリームとアイスに、さっぱりとしたほうじ茶のゼリーがよく合います。

 

13

メニューには田中茶舗のほうじ茶もあります。寒くなると、温かいほうじ茶が美味しいです。

 

14

 

師走に入り、とても寒くなりました。寒さが厳しい郡上八幡。身も心も、ほっと温まるほうじ茶は、町の人々には欠かせない昔ながらのお茶です。

夏は「郡上おどり」で、にぎやかな郡上八幡。冬になると観光客が減り、ひっそりとしていますが、町の営みは変わりません。美味しい名物がたくさんあり、町屋が多く、冬の景色にも風情があります。田中茶舗、史月さんの穏やかで温かい郡上言葉にふれながら、美味しい郡上銘茶に出会ってみませんか。

次回は、今回のコラムでご紹介した郡上八幡の古民家カフェ「お抹茶処 宗祇庵」をご紹介します。宗祇庵では岐阜県産のお茶を使い素敵なお茶メニューを提供しています。

田中茶舗 郡上八幡島谷948(郡上八幡インターから5分)定休日 日曜日
インターネットでの購入 郡上八幡屋 郡上八幡産業振興
http://shop.gujohachiman.com/

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。