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岐阜のお茶旅 vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。

2017.11.16

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岐阜県で一番小さな村。岐阜県東部の加茂郡東白川村のお茶畑は山に囲まれた美しい景色に点在しています。「日本で最も美しい村」連合に加盟し、「白川茶」と「東農ひのき」は、村人たちが豊かな自然の中で育んできた素晴らしい産業です。
清流「白川」が流れ、山の斜面には美しい茶畑。東白川村、五加(ごか)地区の茶畑です。この茶畑は白川茶発祥の地の蟠隆寺(ばんりゅうじ)跡の近くにあります。

「無農薬栽培に踏み切った五加(ごか)地区茶農家の思い」
昭和41年(1966年)農事組合法人五加茶生産組合組が成立します。そして、平成11年(1999年)から除草剤を含む全農薬を一切使わないお茶づくりをスタートさせます。組合員数は71名。栽培管理面積は18ha。一戸当りの平均栽培面積は0.2ha~0.4ha。
無農薬栽培に踏み切った理由は、茶農家さんが農薬を使用した後、体調が悪くなる人が数人いたことでした。体に悪いものを使ってお茶造りをしたくない。「白川茶発祥の地」としての伝統と誇りを持ってお茶を製造していきたい。五加地区の茶農家さんのお茶造りによせる情熱から、無農薬栽培のお茶造りが実践されていきます。
五加茶生産組のモットーは
「安全 安心」
「この先のずっと先の健康を」
「ていねいに、ていねいに」
求めるお茶の味は「昔ながらの山茶の味」
化学肥料もできる限り減らし、有機栽培にも取り組みます。平成20年(2008年)には、一部の茶園を有機栽培茶園に指定しました。

9月のお彼岸の頃、東白川村五加茶生産組合、販売担当の栗本重秋さんにお茶畑を案内して頂きました。

 

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この畑は組合の畑です。有機栽培で「やぶきた」と「べにふうき」の2種類の茶木を栽培しています。除草剤を使わない茶畑で一番手間がかかることは「草引きですね。」と答える栗本さん。「広大な茶畑ではできないけれどね。自分達で管理できる広さの茶畑だから。」小さな生産組合で、話し合いながら、納得できる理想のお茶を造るその姿は、和やかで生き生きとしています。

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五加地区の茶畑は写真のように、茶木の下には土が見えません。抜いた草や山仕事で刈った草などが敷き詰められています。これは堆肥として利用されます。東白川村の名産、東農ひのきの製材所から出る木の皮や木片を活用して作った有機堆肥も使用しています。山の恵みをお茶造りに活用している自然の肥料です。

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すすきが風に揺れる美しい山の中の茶畑は、自然の風景の中に溶け込んでいます。

平成18年(2006年)べにふうきの栽培を始めます。「べにふうき」は花粉症予防に効果があるとされるメチル化カテキンが豊富です。一般的に紅茶に適した茶葉として使用されますが、紅茶にすると茶葉が発酵することによって、メチル化カテキンが消滅してしまいます。発酵していない緑茶にすれば、メチル化カテキンの効果が期待できます。五加茶生産組合のべにふうきは農薬と化学肥料不使用、有機堆肥使用で栽培されているので、とても安心です。粉末茶も生産しているので、より効果的に安心してメチル化カテキンを取り入れることができます。

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五加茶生産組合が丹精込めて生産した、農薬と化学肥料不使用、有機堆肥使用のやぶきた種の煎茶「つちの幸」と「はなみずき」です。「はなみずきは」気軽に飲めるティーバッグになっています。
ほんのり黄緑かかった水色。渋みは穏やかで、清々しく、清涼感のある味わいです。まるで、森林浴をしているような爽やかな気持ちになります。写真のカーネーションは栗本さんがお土産に持たせてくれました。栗本さんはお茶の他に、カーネーションの栽培と林業を営んでします。この村の茶農家さん達は、お茶以外の農産物を生産したり、林業、猟師などと兼業して暮らしています。
煎茶「つちの幸」は土の幸せを願う五加の人々のお茶造りの思いが伝わります。そして、東白川村の名物「ツチノコ」を連想します。実はこの村はツチノコで有名な村なのです。ツチノコは日本に生息すると言われている未確認動物のひとつです。胴体が太い蛇と形容されています。東白川村には「ツチノコ」目撃者が多数いたことから、この村には生息しているらしいと話題になり、毎年5月に「つちのこフェスタ」が開催されます。茶畑でツチノコを捜索する楽しいお祭りとなっています。

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五加にある白川茶屋(農業夫人の直売所)では美味しい「つちのこ焼き」がお出迎えしていました。
香取慎吾さんが訪れて、「美味しい!」と喜んで下さったことから、大人気のスイーツになっています。

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この茶屋では、地元の女性達が郷土料理の「朴葉ずし」や「五平餅」を製造販売しています。東白川村のお煎茶も楽しめます。

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朴葉餅とお煎茶。自家製のお漬物もついてきます。縁側で頂くような、懐かしい気持ちになります。気軽に東白川村のお煎茶を味わえるのが、とても嬉しいです。

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美しい白川が臨める場所に立つ五加茶生産組合。戦後から現在までの間、お茶造りの在り方が大きく変化してきた中で、失いたくないものを大切に守り、未来への安全と健康を築き上げていくお茶造りをしています。昨年から取り組む「里山の茶畑でお茶づくり体験」では、たくさんの子供たちも参加しました。新茶の茶摘みをして昔ながらの「山茶」づくりを体験する楽しいイベントです。茶畑を眺めながらお昼ご飯を食べたり、お菓子を作ったり、茶農家さん達との素敵な交流が魅力的です。出来上がったお茶はお土産に持ち帰ります。

「栗本さんに美味しい山茶のことを伺ってみました。」
製茶工場がなかった頃、摘んだお茶は釜で炒って、それをむしろの上で手もみをして、乾燥させます。工場ができてから、お茶は蒸して作るようになりました。山仕事の時、火を焚いて、やかんの湯に茶葉を入れて火にかけます。その間、数時間、山仕事をして戻ると、美味しいお茶が出来上がっている。今から、50年ほど前のお話です。その美味しさを忘れないで、お茶造りを続ける栗本さん。来年の「里山の茶畑でお茶づくり体験」は5月12日に開催予定です。昔ながらの美味しい山茶を再現できるのは、素晴らしいことです。

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五加茶生産組合のお茶の販売所はありませんが、東白川村の特産品を販売するネット・ショップ「つちのこマルシェ」で購入ができます。
五加茶生産組合の栗本さんは戦後生まれです。亡くなられた明治生まれのお爺様や大正生まれのお父様の山のお話はとても興味深い楽しいお話でした。お爺様が目撃した「ツチノコ」のお話はワクワクします。そんな山の話を聞きながら、山茶を楽しめるのは素敵なことです。ずっとこの先も、山茶の味が受け継がれていきますように、心から願って、来年の「里山の茶畑でお茶づくり体験」を心待ちにしている私です。

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。