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岐阜のお茶旅 vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶

2017.09.15

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9月になり空気がひんやりしてきた朝晩には、あたたかいお茶が美味しいですね。
今回は東白川村のお茶の歴史をご紹介いたします。

岐阜県の東部、加茂郡白川町、東白川村を中心に栽培される日本茶が「美濃白川茶」です。
「美濃白川茶」の歴史は、今も村人達に伝えられ、大切に守られています。
東白川村、五加(ごか)地区に残る古いお寺の跡地が「美濃白川茶」発祥の地です。

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450年ほど前、東白川村 五加(ごか)地区にある蟠龍寺(ばんりゅうじ)の住職が京都の宇治から茶の実を持ち帰り、参道の石垣に植え、里人たちに栽培を奨励したのが、お茶造りの始まりです。当時、流行した疫病の予防にお茶を用いたと言われています。

現在、蟠龍寺は石垣とその奥に残された歴代の住職のお墓しか残っていませんが、参道脇の石垣に自生する在来種のお茶の木が村人達に守られ、受け継がれています。
東白川村は明治時代初期の廃仏毀釈の断行が厳しかったことから、今も村には、お寺が一寺も残っていません。お寺のない神道の村なのです。もちろん蟠龍寺も廃寺となり、お堂は残っていません。僧侶もいません。お寺が無くなっても村人たちは、蟠龍寺に伝わるお茶の木を守り続け、「美濃白川茶」発祥の地としてお茶を造り続けています。嘗ての蟠龍寺の檀家達が神道になり、今は宮司として毎年、新茶の茶摘みの頃、「蟠龍寺献茶慰霊祭」を執り行っています。

参道の石垣に自生する在来種の新茶の葉を丁寧に手で摘み、製茶します。このお茶を淹れて住職のお墓に献茶をします。茶の木を守り続ける地主、宮司、村の茶業関係者が、村にお茶を伝えた住職に感謝の気持ちを報告するとともに東白川村の茶業の繁栄を祈念します。

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蟠龍寺跡の付近には、お茶畑が広がっています。450年前、石垣に茶の実を植えた住職は、遠い空からこの景色を愛おしく、微笑みながら眺めているかもしれません。そんな、いにしえの思いに心を馳せながら、東白川村のお茶を楽しむことができたら嬉しくなります。この付近の五加(ごか)地区のお茶は、17年前から農薬を一切使わないお茶造りをしています。

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前回ご紹介した「有限会社 新世紀工房 茶蔵園(さくら園)」は、「蟠龍寺献茶慰霊祭」のために製茶したお茶を再火し「大門茶」として完成させました。多くの方に、「美濃白川茶」起源のお茶を味わって頂きたい、熱い思いが伝わってきます。
残念ながら、現在は販売されていませんが、今回は特別に試飲させて頂きました。

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新世紀工房の茶師、田口雅士さんに、今年の春に摘まれた貴重な「大門茶」を淹れて頂きました。
450年の時を経て現代に蘇る、いにしえのお茶の味は、野性的な香りと風味、複雑な芳香が長く続きます。渋みは穏やかです。お茶を飲みほした茶杯の残り香がほんのり甘く漂います。田口さんのお話では、毎年、毎年、味わいが違うそうです。この在来種は、やぶきた等と比較して茶葉自体が大きく、丸みを帯びた形で、わずかに黄色がかっています。石垣に守られた神秘的なお茶です。

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秋風が吹き始めた9月の初旬、茶師の田口さんは、秋に美味しくいただけるお茶のブレンドを考えています。東白川村の伝統的なお茶を生かしたブレンドです。「道の駅 茶の里 東白川」では、9月23日、24日の両日「新米祭り」とともに「4種類のお茶 飲み比べコンテスト」を行う予定です。美味しい新米にはどんなお茶が合うのでしょうか。楽しみです。

東白川村のお茶は10月14日の東京駅 「TRAVEL HUB MIX」 のイベントに出展する予定です。茶師の田口さんも参加します。関東の皆様にも「美濃白川茶」を楽しんでいただけたら、とても嬉しいです。
次回は東白川村でお茶が飲めるスポットや東白川村の伝統的なお茶の造り方をご紹介します。

道の駅 茶の里 東白川 公式サイト
http://oishii22.jp/
道の駅 茶の里東白川 茶蔵園(さくらえん)
http://oishii22.jp/sakuraen/
五加茶生産組合
http://www.gokacha.com/

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやし のりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。