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岐阜のお茶旅 vol.28_伝統から進化へ 洗練された新世代の白川茶 新田製茶

2019.10.17

 

9月の終わり、すすきが風に揺れる加茂郡白川町です。温かい白川茶が美味しい季節になりました。今回は西白川地域、飛騨川の東側に位置する河東の「新田製茶」をお訪ねしました。

 

 

新田製茶は1998年に設立され、白川町では比較的新しい製茶工場を有する会社です。従業員は社長を含め4名で、繁忙期にはパートを雇用しています。

 

 

写真左側は社長の新田哲也さん。右側は専務の新田正樹さんです。平成15年(2003年)「第62回中日農業賞」を受賞した当時のお写真です。お二人は2歳違いのいとこ同士です。
哲也さんと正樹さんは高校を卒業後、静岡県の農研機構野菜茶業研究所で茶の栽培や流通を学びました。哲也さんはその後1年間静岡県富士市にある「小林園」で研修を終え、故郷の白川町に戻ります。当初は地元にある広野茶生産組合にお茶を出荷していましたが、静岡で学んだ技術を生かしたいと考え、新田製茶を立ち上げます。

 

 

哲也さんは、静岡の「小林園」での研修中において、お茶造りに対する高い意識のあり方を学びました。そのモチベーションが大きな原動力となり、30代の初めに会社を設立し製茶工場を建て、自園、自製、自販のスタイルで専務の正樹さんと共に茶業に携わっていきます。

 

 

昔から銘茶「白川茶」が造られてきた白川町。風土のポテンシャルを高めていくお茶造りを目指して、哲也さんは茶園の管理に力を注ぎます。「堆肥」「有機肥料」を主体とした土づくりにはこだわりを貫きます。地元で出た籾殻や米糠を利用して自家製堆肥を作り、秋に茶畑に施します。この産地は害虫の発生が少なく、農薬の使用量もかなり少なくてすみます。新田製茶は「ぎふクリーン農業」の認証を受け、人にも環境にも優しい農業を実践しています。「ぎふクリーン農業」とは有機物等を有効活用した土作り並びに環境への負荷が大きい化学肥料、化学合成農薬の効率的な使用と節減を基本とした環境にやさしい農業です。
茶木の仕立て方を丁寧に行う新田製茶では「芽重型」と呼ばれる方法を施しています。この方法は同じ面積の中で芽の数を少なくして育てます。一つの芽にたくさんの栄養が行くため、芽が大きく柔らかな茶葉が育ちます。収穫量は減りますが、上質で美味しいお茶が出来上がります。

 

 

新茶の茶摘みの風景です。品評会用のお茶は手摘みで収穫されます。

 

 

関西、県品評会に出品し実績を積み重ねています。関西品評会1等受賞 農蚕園芸局長賞 全国茶生産団体連合会長賞 県品評会1等受賞 県東海政局長賞 岐阜県農業技術研究局長賞 茶園の部特別優秀賞。
専門家の厳しい評価を受けることで、お茶の品質向上に努めています。

 

 

茶園面積は3.5haで、全体の7~8割は乗用型摘採機でお茶を摘みます。摘み取られた茶葉は少しでも早く、新鮮なうちに加工します。その日に摘み取られた茶葉に合った蒸し時間、製造機械の温度、風量、時間を決めて、色、艶、味、香りを工程ごとに厳しく吟味しながら作り上げていきます。

 

 

新田製茶の販売を支えるスタッフです。左側が哲也社長の奥様、久美子さん。右側が正樹専務の奥様、弘恵さんです。新田製茶のお茶は道の駅や県内のファーマーズマーケットで販売されています。イベントでは試飲サービスやお茶の詰め放題を提供し、お客様と直接触れ合いながら、美味しい白川茶のPRに務めています。地元のお客様が「美味しい!」と喜んで下さることがとても嬉しいことです。親しみやすく、親切な接客にリピーターのお客様も多いです。名古屋市栄のオアシス21にある岐阜県アンテナショップg.iFoods(ジ・フーズ)にも出品されています。

 

 

上質なお茶をティーバックにした「匠」は「JALふるさとからの贈り物」のマイレージ交換カタログに掲載されています。

 

 

茶園の土作りにこだわり、白川茶の力強い香りと滋味を引き出し、繊細で味わい深いお茶を仕上げる新田製茶。季節ごとにお茶の変化が楽しめるように、商品も工夫されています。春は「初摘み新茶」夏はお茶の甘味が手軽に味わえる「水出し煎茶」秋は新茶を低温貯蔵し、熟成した茶葉を遠赤で少し強めに焙煎した「秋のお茶」冬の「春待ち茶」は、じっくり焙煎して仕上げられ、さわやかな香りとまろやかな味わいが楽しめます。毎日気軽に頂ける「上煎茶」は100g、648円で驚くほどにお値打ちです。すっきりとした清涼感の中にコクとうま味がギュッと詰まった美味しい煎茶です。渋みにキレがあるので渋みの重さを感じさせない心地良さがあります。
品種「おくみどり」シングルオリジンの煎茶「滴音(しずね)」や茶の樹に覆いをして光を遮ることにより、まろやかなうま味や甘味を引き出す「極上煎茶」などのこだわりの高級茶の生産にも力を注いでいます。白川町の自然と真摯に向き合い、多様なお茶の味わいを表現する新田製茶の未来が楽しみです。

新田製茶 岐阜県加茂郡白川町 2966-1
TEL 0574-72-2695
JR白川口駅より車で10分

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。
●vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗
●vol.7_宗祇水に導かれて・・・お抹茶処 宗祇庵
●vol.8_郡上八幡 第13回 小那比茶 茶摘み・茶もみ体験
●vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会
●vol.10_西美濃に銘茶あり 美濃いび茶 茶山正
●vol.11_尾張名古屋のお抹茶ワールド お茶と抹茶スイーツの店 茶縁
●vol.12_岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑
●vol.13_有楽苑 国宝茶室 如庵  愛知県犬山市
●vol.14_Barスタイルで夏の白川茶を楽しむ。 カガミガハラ・スタンドで東白川村のお茶イベント
●vol.15_清らかな山の緑風が香る白川茶 東白川村 茶広農園
●vol.16_天空の茶園で茶の実油の魅力を伝える 春日乃売茶翁
●vol.17_郡上八幡 城下町に栄えた茶道文化 町屋カフェ さいとう
●vol.18_名古屋栄のお抹茶専門店 茶々助 お抹茶を味わう日
●vol.19_近江茶の老舗 中川誠盛堂茶舗 日本最古の茶園のお茶が蘇る「日吉銘茶」
●vol.20_伊深の里から、新たな発信。日本茶と日本古典芸能の世界へ。茶霞(さか)O’carre(オキャレ)
●vol.21_伝統の美濃白川茶をスタイリッシュにアプローチ 美濃加茂茶舗
●vol.22_美味しい「いび茶」を求めて 岐阜市の老舗 明治屋茶舗
●vol.23_郡上の美味しいお茶と昔ながらのお団子を召し上がれ 団子茶屋郡上八幡
●vol.24_岐阜の南西端の美しい里山 美濃上石津茶 平塚香貴園
●vol.25_岐阜の銘茶 白川茶の里 白川町黒川

●vol.26_甘く華やぐお茶の香り 昔ながらの白川茶  嶋田園
●vol.27_チーズと日本茶が出会った日 国産ナチュラルチーズ博in NAGOYA

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。