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岐阜のお茶旅 vol.21_伝統の美濃白川茶をスタイリッシュにアプローチ 美濃加茂茶舗

2019.03.22

 

今年2月にオープンした「美濃加茂茶舗」は岐阜県美濃加茂市、美濃太田駅前商店街にあります。空きビルを活用したコミュニティービル「MINGLE(ミングル)」の1階です。「MINGLE(ミングル)」は「混ざり合う」の意味。国籍や年齢、職業などを越え、市内外から集い交流できる場を創出するため、ウェブサービスなどを手掛けるIDENTITY(アイデンティティー)が空きビルを借り、リノベーションしました。美濃加茂茶舗の営業時間以外には、飲食店や雑貨店などの開業を目指す人向けのレンタルスペースとなり、2階、3階は宿泊スペースとして今春頃、オープン予定です。様々な人々が行きかう空間で、美濃白川茶をカジュアルに楽しめる、美濃加茂茶舗がMINGLE(ミングル)の表看板の役割を担っています。

 

 

温かみのあるスタイリッシュな店内です。美濃加茂茶舗は美濃地域から生まれた美濃白川茶と美濃焼の伝統文化から誕生しました。

美濃地域は400年前の桃山時代、日本最大の焼き物の産地でした。土岐市の織部の里公園内では、国指定遺跡「元屋敷陶器窯跡 連房式登窯」が残っています。桃山時代の武将、古田織部(重然)の指導によって創始されたと言われている織部焼は美濃地域で生産されました。日本人が憧れた唐物(中国産)の白磁や染付の写しとして表現された焼き物「志野焼」も美濃地域で誕生します。国宝八茶碗の一つ志野茶碗「銘卯花墻」(三井記念美術館蔵)はあまりにも有名です。茶の湯の世界をリードした焼き物がこの地で多く生産されたのです。そして美濃焼は現在でも、食器類の生産量が全国シェアの約60%を占めています。お茶の歴史も古く、室町時代からの生産の記録が残り、江戸時代末期には全国的に有名になりました。美濃加茂茶舗では、美濃白川茶と美濃焼を融合させた「日本茶のある暮らし」を提案しています。

 

 

美濃白川茶を監修したのは、加茂郡東白川村の(有)新世紀工房で茶師を務める田口雅士さんです。東白川村は美濃白川茶発祥の地として有名なお茶の産地です。お茶は緑茶、煎茶、ほうじ茶の3種類があります。緑茶は単一品種、煎茶はやぶきた種を中心にブレンドされています。茶師の田口さんは何度かこのコラム「岐阜のお茶旅」に紹介させて頂いております。東白川村の美しい山々と谷川から湧き立つ朝霧。清々しい山の空気を感じる美濃白川茶が美濃加茂茶舗で楽しむことができます。

 

 

美濃加茂茶舗店長、日本茶インストラクターの資格を持つ、伊藤尚哉さんです。お客様が注文したお茶を1杯、1杯、丁寧に淹れます。使用する茶器はもちろん、美濃焼です。

 

 

お茶が注がれる瞬間、馨しい香りが店内に広がり、とても心地よく癒されます。

 

 

テイクアウトが中心となりますが、店内でもイートインできます。土曜日、日曜日には、美濃焼の器で提供するメニューもあります。

 

 

緑茶は渋みが少なく爽やかなお茶の旨味が満喫できます。煎茶は心地良い渋みとまろやかなうま味がバランスよく溶け合っています。カウンターにはモダンで美しい美濃焼が並んでいます。煎茶が苦手な方には、ほうじ茶やラテのメニューもあります。ほうじ茶は一番茶を使用した贅沢な旨味と焙煎の香りが楽しめます。

 

 

美濃加茂茶舗ではお茶に合わせて、お菓子をプロデュースしています。美濃加茂産の米粉を使用した「もちどら」です。プレーン、抹茶、竹炭の3種類と、あんことカスタードの2種類のフィリング。美濃加茂茶舗の近くに店舗を構える和菓子屋「みのかも金蝶堂」とのコラボ商品です。甘さ控えめで、優しく上品なパンケーキのようなどら焼きです。お好みで、フルーツや生クリームなどを盛り付けて、素敵なお茶の時間を楽しんでいただけるようにSNSを使って提案しています。お茶とお菓子がセットで購入できるのは素敵なアイデアです。

 

 

美濃加茂茶舗のある美濃太田には、中山道の「太田宿」があります。京都と江戸をつなぐこの街道は、参勤交代をはじめ、経済、文化を結ぶ大切な道として栄えました。今も残る中山道を歩くと、江戸時代の本陣、旅籠が残り、その賑わいを想像することができます。江戸時代、この街道を通り美濃茶が江戸へと運ばれていきました。

 

 

街道の南側の堤防から眺める木曽川の風景は昔から変わるとなく、たっぷりとした水をたたえています。江戸時代の旅人に思いを馳せ、美濃加茂茶舗の美濃白川茶を味わってみてはいかがですか。美濃加茂茶舗は美濃太田駅から徒歩5分。JR名古屋から特級で約40分で到着します。美濃太田駅を起点に美濃焼と美濃白川茶を訪ねる旅もお勧めです。美濃焼を求めて多治見市、土岐市へ足を伸ばせば素敵な抹茶茶碗を見つけることができます。美濃太田駅から北東へ向かい白川町、東白川村へ足を延ばせば、山の中の清々しい茶園の風景の美しさに心が癒されます。

美濃加茂茶舗 岐阜県美濃加茂市太田町2689‐14 MINGLE(ミングル)1F

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。
●vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗
●vol.7_宗祇水に導かれて・・・お抹茶処 宗祇庵
●vol.8_郡上八幡 第13回 小那比茶 茶摘み・茶もみ体験
●vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会
●vol.10_西美濃に銘茶あり 美濃いび茶 茶山正
●vol.11_尾張名古屋のお抹茶ワールド お茶と抹茶スイーツの店 茶縁
●vol.12_岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑
●vol.13_有楽苑 国宝茶室 如庵  愛知県犬山市
●vol.14_Barスタイルで夏の白川茶を楽しむ。 カガミガハラ・スタンドで東白川村のお茶イベント
●vol.15_清らかな山の緑風が香る白川茶 東白川村 茶広農園
●vol.16_天空の茶園で茶の実油の魅力を伝える 春日乃売茶翁
●vol.17_郡上八幡 城下町に栄えた茶道文化 町屋カフェ さいとう
●vol18_名古屋栄のお抹茶専門店 茶々助 お抹茶を味わう日
●vol19_近江茶の老舗 中川誠盛堂茶舗 日本最古の茶園のお茶が蘇る「日吉銘茶」
●vol20_伊深の里から、新たな発信。日本茶と日本古典芸能の世界へ。茶霞(さか)O’carre(オキャレ)

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。