ENJOY!日本茶

ホーム
コラム
> 岐阜のお茶旅 vol.12_岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑

岐阜のお茶旅 vol.12_岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑

2018.06.17

001

 

今回は岐阜県で一番人気の茶畑観光スポット「岐阜のマチュピチュ」と呼ばれる天空の茶畑をご紹介します。
揖斐郡揖斐川町春日六合にある上ヶ流(カミガレ)茶園は岐阜県の最西部に位置します。揖斐川町の西側は滋賀県と接しています。標高330mの清々しい山の中。歴史は古く700年以上も遡ります。冷涼な気候で昼夜の寒暖差が大きく朝霧が発生しやすいため香り高いお茶が栽培されます。山深い上ヶ流茶園では急峻な地形のため、やぶきた種への改植がなかなか進まなかったため、今でもこの土地ならではの在来品種の茶畑が残っています。標高が高いため害虫がつきにくいことから、地区全体が無農薬で茶葉を栽培しています。

2016年4月、茶畑の絶景を眺めることができる山に登る遊歩道が、地区の人達によって造られました。茶畑を抜けて山道に入り20分ほどで登ることができます。山にすっぽり包まれた上ヶ流茶園の素晴らしい景色は「マチュピチュ」を思わせる天空の茶畑です。SNS、テレビ、新聞、雑誌、様々なメディアにも取り上げられ、今では、立派な観光地です。茶畑見たさに、老若男女問わず、年齢問わず、山に登ります。

茶園近くには駐車場がないので、地区のボランティアの人達が、駐車できそうな路上、お寺や神社を案内してくださいます。そして「天空の遊歩道散策マップ」を手渡してくれます。

 

002

003

 

茶畑に「さざれ石」。実はこの地区、「君が代」で詠われる「さざれ石」の発祥の地として知られています。滋賀県と岐阜県の境にある伊吹山が産地です。近くにさざれ石公園があり、そこには、「君が代」で詠われた大きな「さざれ石」があり、岐阜県の天然記念物に指定されています。

 

004

 

 

茶畑を抜け山道に入ります。この日は鶯が美しい声で鳴いていて、澄み切った山の空気の中に響き渡っていました。茶畑から山を見上げると、登る人々の姿がよく見えます。

 

005

 

 

山の上の方に、小さいですが、人々が確認できます。下は茶畑です。
登り口に入ると、日差しも強く感じ、お天気の良い日はたっぷり、いい汗が流れます。

 

006

 

 

八合目辺りからだんだん、茶畑が見えてきました。
そして頂上の絶景スポット。

 

007

 

008

 

山にすっぽりと包まれた美しい茶畑。清々しく澄み切った空気。新茶の季節が一番美しいのは言うまでもありません。
山を下りると地域の人々が、「どうぞ、飲んでって下さい。」と上ヶ流茶をすすめて下さいました。温かい新茶と冷たい三年番茶。山登りの後に、美味しいお茶が頂けてありがたい気持ちで、心もほっこりします。三年番茶は甘みがしっかりあり、後味が爽やかです。この番茶は、3年間放置した茶木から造った番茶です。

 

009

 

010

 

 

お茶やお土産の購入もできます。地域の方とお話しながら、お茶を飲んだり、買い物ができるのは、とても素敵な時間です。駐車場の案内やお茶の試飲、マップのサービスなどはすべて無料で、お客さんの募金のみです。4年ほど前にこの地を訪れた時は、写真を撮りに来ている人が5~6人確認できる程度でした。茶畑に入ると、私が遭遇したのは「たぬき」一匹。それから、親切な農家のお爺さん。「遠くから、よう、きてくんさった・・・」大正生まれの元気なお爺さんはこの土地の話をいろいろお話して下さいました。山道を登り、たどり着く秘境のようなこの土地に、多くの人々が訪れる昨今、地区の人々が温かく迎えて下さいます。新茶の収穫で忙しい5月半ば過ぎの上ヶ流の茶畑です。

 

011

 

012

 

013

 

くねくねと、うねるように植えてある茶木が在来品種です。上ヶ流茶園では10軒ほどの農家が茶の栽培に携わっています。上ヶ流茶生産組合では、平成22年、在来品種のお茶を「天空の古来茶」と名付けてお茶と茶園の景観保護に取り組んでいます。この地域では紅茶を生産している人や、茶の実から採ることができる「茶の実油」の生産に取り組んでいる人もいます。

 

014

 

購入した在来品種のお茶「天空の古来茶」を淹れてみました。淹れる前の茶葉を食べてみると、苦味がなく、とても美味しいです。スイーツのトッピングにもできます。アイスクリームにかけてみたいです。無農薬だから、そのまま食べても安心ですね。お茶の味は渋味がなく、さっぱりとした味わいです。爽やかな風味の中にほのかな甘みが感じられます。
上ヶ流茶は一番茶のみの摘採です。新茶の時期に味わいたい薫風のお茶です。

岐阜県西部は「いび茶」の産地です。鎌倉時代からお茶が造られていた古い歴史が残ります。今は、自然豊かな長閑な土地ですが、古代から中世はとても重要な土地だったようです。揖斐川町の南西、滋賀県との県境にある不破郡にある関ヶ原は、皆さんがご存知のように、「関ヶ原の戦い」の戦場です。古代最大の内戦「壬申の乱」室町幕府を確立させた中世の戦闘「青野ヶ原の戦い」も実はこの関ヶ原が戦場です。この地に作られた「不破の関」は古代東山道の関所の一つです。この地は都を防衛する上での重要な土地でした。当時は関ヶ原を境に東国となります。都の影響を受けて、この地が栄えていた中世の足跡が感じられるのが「いび茶」の産地です。

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。
●vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗
●vol.7_宗祇水に導かれて・・・お抹茶処 宗祇庵
●vol.8_郡上八幡 第13回 小那比茶 茶摘み・茶もみ体験
●vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会
●vol.10_西美濃に銘茶あり 美濃いび茶 茶山正
●vol.11_尾張名古屋のお抹茶ワールド お茶と抹茶スイーツの店 茶縁

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。