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岐阜のお茶旅 vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶

2017.08.15

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お茶は春の息吹を頂く清らかで美しい飲み物。新茶の季節になると、あらためて、豊かな自然の恵みに気づきます。
今回ご紹介する茶畑は岐阜県東部、加茂郡東白川村。美濃白川茶の地域です。岐阜県では茶生産地の北限に位置します。標高1000m前後の山に囲まれ、村域の90%が山林です。すっぽりと山に囲まれた美しい村です。村の中央を東から西へ清流白川が流れ、立ち込める朝霧が香り高い良質な茶葉を育みます。
5月中旬から茶摘みのシーズンを迎えます。気温が低く、標高が高いことから全国的に遅めの茶摘みになります。
今年の春は例年よりも気温が低く、茶摘みが1週間ほど遅れました。

5月21日「新茶の香りを楽しむツアー」が開催されました。有限会社新世紀工房、茶蔵園(さくらえん)の茶師、田口雅士さんの案内による茶畑見学と製茶工場見学を楽しんできました。特典として新茶のソフトクリームと新茶のお土産が頂けます。ご自慢の茶畑は田口家の茶畑です。山にぐるぐると植えられた茶の木たち。田口さん曰く「ぐるぐる茶園」です。茶葉も元気に芽吹いています。田口さんも茶摘みのシーズンを迎えて喜びの笑顔です。麦わら帽子も素敵です。このロケーションは田口さんお勧めの立ち位置で、東白川村のポスターにもよく登場する風景です。
ドローンで撮影すると山の形がよく見えます。

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案内して頂かないと茶畑に入ることは、なかなかできない体験です。
山に茶木が植えられていると、どこから登っていいのかさえ分かりません。車で山の細い農道を登り、山の登り口に車を止めて田口さんの案内で茶畑の山を登って行くとすぐに視界が広がり、まぶしい新芽の茶畑が浮かび上がります。5月のまぶしい陽ざしにキラキラ光る茶葉。空気が清々しく、爽やかな風が吹き抜けます。

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「ぜひ、この茶畑で東白川村の新茶を飲んで下さい。」
田口さんは、出来立ての新茶を冷水でじっくり抽出した冷茶で、粋なおもてなしをして下さいました。爽やかな甘さと、とろみを感じる舌ざわり。思い切り空気を吸い込みたくなるような清々しさ。美しい山の茶畑でいただくお茶はとても美味しいです。

田口さんは生まれも育ちも東白川村です。お父様は茶農家、林業、猟師と、三種の仕事をこなしています。東白川村は桧が有名な土地でもあります。幼いころから茶畑を見て育った田口さんは東白川村の自然環境や山間に点在するそれぞれの茶畑の特徴をよく熟知しています。新世紀工房茶蔵園(さくら園)では、年間2万kgの荒茶を地域内の農家から仕入れ、30点以上の緑茶製品を製造し販売しています。そのお茶のブレンダー、茶師が田口さんです。村の茶畑を体で感じて育った田口さんだからこそ、それぞれの茶畑のお茶の美味しさを表現できるブレンドができるのです。茶農家も生産量も減少していくこの頃ですが、新世紀工房では移住者の若者も働いています。村で生まれ育った人だけではなく、全く違う環境で育った人が、新たな感覚を村に吹きかけることで、豊かな生産性を育んでいくことは、とても輝かしいことです。

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新茶のシーズンは茶摘みも製茶工場もとても忙しい時期ですが、多くの人達に新茶が芽吹く美しい茶畑を見て頂きたい。そこで働く村の人々が一番輝いているその姿を見て頂きたい。何よりもお茶造りに携わっている人々が一番喜びを感じる季節です。そんな思いを込めて、今回の「新茶の香りを楽しむツアー」が開催されました。
製茶工場では、今年の品評会に出品するお茶を造っているところでした。皆さん、和やかな優しい笑顔でお茶を造っています。良い茶葉が育ち、美味しいお茶を造ることができる喜びと幸福感が伝わってきます。東白川村のお茶は笑顔で造られているのです。

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新世紀工房は「道の駅 茶の里 東白川」の運営もしています。当日は新茶祭りで、新茶の試飲、量り売りや新茶のわらび餅、新茶のソフトクリームの販売もしていました。抹茶のソフトクリームではなく、煎茶のソフトクリームです。この時季しか味わえない旬のソフトクリームです。爽やかで優しい新茶の味わいが楽しめます。「道の駅 茶の里 東白川」では今回のツアーを開催してくださった茶師の田口雅士さんが手掛ける茶蔵園(さくら園)のお茶を常時、販売しています。体験茶房「極み」では東白川村の最高峰のお煎茶をお菓子とともに味わうこともできます。

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夏は天然鮎が美味しい東白川村です。最寄り駅もなく信号機は村に一つだけ。コンビニはありません。山と川の恵みの美味しい食べ物。清々しい空気。山に囲まれた小さな村。東白川茶は日本全体の茶葉生産量1%にも満たない希少なお茶です。そんなお茶に出会ってみませんか?
次回は東白川村のお茶の史跡をご紹介させて頂きます。

道の駅 茶の里東白川公式サイト
http://oishii22.jp/

道の駅 茶の里東白川 茶蔵園(さくらえん)
http://oishii22.jp/sakuraen/

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやし のりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。