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「日本茶アンバサダーレポート from イタリア」Vol. 3 日本映画に見る「お茶を飲む習慣」、今宵あなたも実体験

2016.03.15

皆様、ボンジョルノ!ピサの日伊文化協会みらいの吉田友香子です。ディープな映画愛好家たちが集う映画館から、小津安二郎監督作品のシリーズ上映にあたってお誘いを受けました。そこで団らんシーンに欠かせないお茶に注目し、鹿児島県志布志市のJAあおぞら様からご協賛頂いた日本茶をご提供。大大大好評でした!!

写真(1)

小津安二郎監督作品上映に合わせた、日本茶の試飲会

映画のテーマや季節を意識して、次のような内容で上映前のミニ講演と試飲会を企画。

• ピサにて「東京物語」=キモノ(浴衣)の着付けを実演。ミニ講演では、TPOに合わせた着物の種類と格を説明。
• ピサにて「秋刀魚の味」=梅酒の試飲。イタリア語の題名がなぜか「酒の味」なので、口当たりの良い甘い梅酒を用意。ミニ講演では、日本ではSake=日本酒とは限らないこと、日本で製造するお酒の種類と日本酒の製法を説明。
• ピサにて「彼岸花」=テーマは家族。日本・イタリアともに長寿国であるが、その記録を支えているのが実は沖縄、サルデェーニャ島という「島である理由」を解説。島でのコミュニティとは裏腹に、都会では老人の孤独死、オレオレ詐欺が頻発している負の現状も報告。けれども楽しく締めくくるために、ママの間で流行の寝相アートを紹介。
• ピサにて「こんにちは」=水出し緑茶の試飲。ミネラルウォーターはエビアンを使用。ミニ講演では、お茶の歴史と効能を科学的に解説。
• ピサにて「晩秋」=クリスマスを意識して、折り紙のクリスマスツリーに挑戦。若い大学生から80歳近いご婦人まで、初心者も含めて一斉に実施。支えのテーブルの無い映画館の座席での作業で、苦労しつつも達成感を得た模様。
• ピサにて「晩春」=白みそ仕立てのほうれん草のお味噌汁の試食。イタリア人の好みだったのか、あっという間にお味噌汁が終了。ミニ講演では、一般的な和の朝食、サラリーマンのワンコインランチ、学校給食、家庭の夕食を紹介。
• リヴォルノにて「東京物語」=ちょっと複雑な折り紙の飾り封筒100個を配布。中に「ありがとう」のメッセージカードを挿入。1枚だけリヴォルノ特有の方言を書いて、それを受け取った人には特別記念品を贈呈するサプライズを演出。

ピサは大学都市だけあって、来場者の半数が若者でした。アシスタントを口実に、キモノ(浴衣)を着て手伝ってくれる女性を毎回募集しましたが、中にはヘアアレンジをして臨む人もいるほど、日本文化への関心は高かったです。最も知名度の高い作品「東京物語」で来場者は優に100名を超え、平日の寒い雨夜でも平均4、50人が鑑賞、映画館も大喜びでした。ふふ、小津監督の名前だけでなく、イベントの内容で関心を引いたかなと自画自賛…

写真(2)

さて肝心の日本茶の試飲では水出し緑茶を準備しました。早々に夕食をすまし、冬の夜道を早足で映画館へ辿り着く頃には、厚着した体もほてるのでしょう。ご提供3、40分前に冷蔵庫から出しておいた緑茶が、心地良い清涼感を与えてくれたようです。お代わりする人も見かけました。今宵のキモノガールたちにお茶の配布を任せるや否や、私は試飲された方たちから質問攻めでした。そのごく一部として、
「この緑茶は冷たいまま飲むものなの?」
「日本では1日の中でいつお茶は飲むの?やっぱり、エスプレッソと同じ感覚?」
「なんでこんなに緑なの?」
「美味しいね。どこに売ってるの?」
痛たた…早く輸入手段を調べなければ。さてミニ講演では効能を科学的に説明したため、とくに健康に敏感な世代が熱心に聴講していました。

写真(3)

今回もまた、日本文化の一部であるお茶、「緑茶と健康」のセットイメージで大好評でした。本当に体に良いので、日本にいた時と同様に私も習慣にしたいのですが、美味しい茶葉にそう簡単に巡り合えません。実際、リヴォルノの映画館で「東京物語」を上映した時に、現地の茶葉販売業者が温かい緑茶を提供していたのですが、箱に書いてある通りの淹れ方と説明しかしていませんでした。使用するミネラルウォーターは何でもいい、水道水でもOKという勢い。多種の茶葉を扱っているため日本茶への理解が浅くなるのも分からなくはないのですが、やはり「専門業者」である以上、一般消費者と同レベルの知識ではいかがなものかと思いました。これが現状ですので、日本人の口で日本茶、日本文化を語ることは重要です。まずい日本食レストランが盛況ですし…

日本国内の皆様と連携して、海外在住の私たちももっと活躍しないといけませんね!

この記事を書いた執筆者

吉田友香子(よしだゆかこ)日本茶アンバサダー

吉田友香子(よしだゆかこ)(ピサの日伊文化協会みらい 代表)

横浜生まれ、三渓園がお散歩コース、隣が花見煎餅さんの工場という環境で育ち、祖母の影響もあってか、おやつにお茶漬けをすするシブ~い幼児でした。小学校時代は父の仕事の関係で中東アラブのクウェートに在住、小学生にして単身、バンコック経由の一時帰国を経験させられたのが、後の運命を左右することになったのでしょうか。様々な国の文化に触れるのが好きで、大学ではイタリアの都市史・建築史を研究、留学を経てピサ大学で博士号を取得。さあ帰国してアカデミック街道を進むかと思いきや、ピサ留学中に日伊文化協会みらいを設立して日伊の文化・学術交流に励んだため、遂にはイタリアで起業し、仕事と日伊交流にいそしむ現在に至ります。珈琲の国イタリアでも、健康に良い日本茶、和食への関心はとても高いのですが、残念ながら美味しい飲み方までは浸透していません。私自身も勉強して、イタリアで日本茶をより身近に楽しんで頂けるよう頑張ります!